適応策Vol.3 徳島県

高水温でも伸びるスジアオノリ
吉野川での野外試験へ

徳島県・吉野川の洪水流量(基本高水ピーク流量)は1秒間に24,000立方メートルと全国1位。
いったん洪水になると手がつけられない暴れ川は、古くから流域に大きな被害を与えると同時に、肥沃な土壌を運び、豊かな恵みをもたらしてきた。吉野川流域で養殖されているスジアオノリもそのひとつだ。 現在、温暖化による海水温の上昇が、スジアオノリ養殖に影響をおよぼしている。特産品の維持に向けた挑戦を取材した。

スジアオノリ

海水温の上昇で、吉野川流域で養殖されているスジアオノリにも深刻な影響が出ている。お好み焼きなどにかける「青のり」としておなじみのスジアオノリは、海水と淡水が混じる汽水域に生息する筋状の藻類。徳島県は国内シェア7~8割を占め、日本一の生産量を誇るが、近年は冬になっても水温が下がらず、収穫量が不安定化している。特に2015年は、10月中旬以降の水温が平年より2℃ほど高かったうえに、12月の豪雨に見舞われ、出荷量が前年比84.5%と激減した。

このため、徳島県水産研究課では2015年から高水温耐性品種の開発に着手し、2016年に高水温でも伸びる株を発見した。

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スジアオノリの生育に適した水温は15~17℃。この環境下で育てると長いもので1m以上に生長するが、20度以上で生長不良を起こし、10℃を下回ると生長が鈍くなる。したがって漁期は限られた短期間となる。通常は10月の種付け後、本養殖を11~12月の2か月間で行うが、近年は水温が平年よりも下がりにくく、養殖の開始時期が遅れていると担当者は語る。

「漁期が短くなればその分収穫量が減り、漁業者さんの収入も減少します。これまでも漁業者さんから高水温でも生長するスジアオノリを作ることができないかと相談はありましたが、ここ数年は要望の声が高くなっています。」

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スジアオノリ養殖の安定性に向けた品種の開発

そこで当研究課は、吉野川で採取した天然株や漁業者に提供してもらった株から「遊走子」と呼ばれる種を採取し、室内培養を行い、水温別に生長率を調査。35℃でも生長する株を発見した。

「とにかく株をかき集めて何回も室内試験を行いました。高水温に強い株が見つかったのは、運がよかったとしかいいようがありません。」

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スジアオノリの養殖は、塩分濃度や漁場環境の変化に大きく左右される。吉野川では、秋の雨量が多いと塩分濃度が下がり、収穫量が減ることが経験的に知られているが、2015年のように増水や出水で養殖施設ごと流されると壊滅的なダメージを受ける。今後予測される集中豪雨の増加や台風の大型化が与える影響も大きい。

「徳島県のスジアオノリが日本一なのは、やっぱり吉野川の環境の良さにあると思うんです。自然と人間がうまく共存できるように、ぼくたちは研究を続けるだけです。」

今回発見された高温耐性株は、今後吉野川で試験養殖の段階に入る。成功すれば、スジアオノリで初の新品種が誕生する。

この記事は2017年8月3日の取材に基づいて書いています。
(2018年2月22日掲載)
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