持続可能な「健康しが」を目指して


取材日 2019/3/11
設置機関 滋賀県環境部低炭素社会づくり・エネルギー政策等推進本部
対象 滋賀県琵琶湖環境部温暖化対策課 参事伊藤克彦、主任技師廣田大輔
琵琶湖環境科学研究センター総合解析部門 主任研究員木村道徳
地域気候変動適応センターVol.1 滋賀県

設立背景

滋賀県は持続可能な「健康しが」を掲げ、県民と社会、それを支える自然環境の健康を目指しています。SDGsにも着目し、パリ協定をはじめとする国際的な動向を加味しながら、気候変動適応についても取組を進めています。
庁内で適応を検討するきっかけとなったのが平成27年度の環境省支援事業の「気候変動影響評価・適応計画策定支援事業」です。庁内の関係部局からなるワーキンググループを設置し、県内の気候変動影響評価等とりまとめを行いながら、平成28年度には「滋賀県低炭素社会づくり推進計画」に適応策を位置付けました。平成30年度の気候変動適応法施行を受けて、同年度1月にはこの体制を活用して滋賀県気候変動適応センターを庁内組織として位置付けました。

―地域気候変動適応センター位置付けと予算化
気候変動の影響は、農林水産業、自然災害、健康、自然生態系など幅広い分野に及ぶと想定されています。滋賀県には気候変動影響を網羅的に調査する試験研究機関が無く、また、これまで農業部局などでは適応に関する調査研究が実施されていたことから、それらの調査研究を更に推進していくことが適応策の推進に繋がると考え、農業、水産、衛生、琵琶湖環境などの各試験研究機関等を低炭素社会づくり・エネルギー政策等推進本部に加え、庁内横断的にセンターを設置しました。推進本部のトップは知事であり、上層部が旗振り役となりつつ、担当者間ではこれまでのつながりを活かしながら国立環境研究所等と連携できるよう体制を強化したいと考えています(図1)。

図1 組織図(平成31年4月)

図1:滋賀県低炭素社会づくり・エネルギー政策等推進本部 組織図 【平成31年4月】

今年度は気候変動の現状を把握し、課題を整理するとともに今後のリスクを評価することで適応策の検討等につなげる予定です 。また、得られた知見をシンポジウムなどで発信することで県民に適応策の実施を促す予定です。その予算化に当たっては、政策課題協議で気候変動の影響評価を行う委託費など適応推進に関する予算要求を行いました。将来予測には不確実性が伴うとはいえ、影響リスクがないわけではありません。気候変動による災害リスク等を解りやすく整理して対策の必要性を考えいくことが肝要であると考えています。

関係各課との連携

庁内組織に地域気候変動適応センターを位置付けましたが、調整に当たっては、政府の気候変動適応法案資料などを持って関係各課に出向き、関連する分野について話を持ち掛けていきました。昨年の降雪量が例年に比べて少なかったなど、県議会でも昨今の異常気象や猛暑などが議題に挙げられていましたので、各課においても問合せを受けることがあったそうです。気候変動に関する県民の関心が高まっていることは、関係各課でも認識をされていたのだろうと思います。

―環境意識の高い県民性を活かした適応推進を目指す
琵琶湖をはじめとする環境問題に熱心な住民の方が多いのは本県の特徴だと思います。環境保全活動に熱心なNPO団体も多く、毎年「マザーレイクフォーラムびわコミ会議」を開催し、琵琶湖の生態系保全、琵琶湖の活用、集水域での森林保全の取り組みなど、幅広く活動報告会を実施しています。
また、温暖化対策課では、滋賀県地球温暖化防止活動推進センターが実施する普及啓発事業の一環として「地球温暖化に関するアンケート調査」を実施しました。平成30年7月から平成31年3月までの期間で約2,200名から回答が得られました(図2)。県民が地球温暖化に伴う影響で不安に感じることとしては、「豪雨による洪水、土砂崩れ等の増加」が68.8%と最も多く、次いで「農作物の収穫量や品質の低下」が53.8%、「健康への不安(熱中症の増加等)」が47.1%、「琵琶湖の環境や生態系の変化」が36.7%と続く集計結果となりました。

図2 アンケートの実施結果

図2:地球温暖化に関するアンケートの実施結果について

今後の展望

2021年度に策定を予定している「地域気候変動適応計画」では、各分野の影響評価を基礎として適応策を充実していくことを目指しています。単なる既存施策の延長ではなく、効果のある施策を検討しなければなりませんし、進捗管理やフォローアップとして数値的な指標をいずれは設けていきたいです。また、滋賀県気候変動適応センターでは、地域の気候変動に関する情報収集を進め、県民や事業者、市町、大学等の研究機関へ情報提供していきたいと考えています。

―ご担当者の声
廣田さん:平成29年度から温暖化対策課に異動し、適応に関しては平成30年度から担当になりました。前任者が平成27年度のワーキンググループを担当していたことから、その記録を見ながら適応を学んできました。
伊藤さん:気候変動は県内にとどまらず人類共通の重要な課題としてやりがいを感じています。
木村さん:研究機関として県の施策を支援したいと考えています。気候変動適応のみならず社会づくりという視点をもって、人口減少や地域経済など社会的課題も含めた「将来社会に向けた適応」を推進するための研究に取り組みたいと考えています。

この記事は2019年3月11日の取材に基づいて書いています。
(2019年4月11日掲載)
PageTop