インタビュー地域気候変動適応センターVol.3 宮崎県

宮崎県気候変動適応センター
九州初の気候変動適応センター設置

宮崎県気候変動適応センター・九州初の気候変動適応センター設置
取材日 2019/9/5
設置機関 宮崎県 環境森林部 環境森林課内
対象 宮崎県環境森林部環境森林課主幹 佐々木達朗
宮崎県環境森林部環境森林課副主幹 中平文季子

多くの部局を巻き込んでの適応センター設置

宮崎県の適応センターにはどのような部局が所属し、どの程度の規模感となるのでしょうか。

佐々木さん:環境森林課、衛生環境研究所、農水産業温暖化研究センター、林業技術センター、本庁各課で構成されています。弊適応センターには専門の職員がいるわけではなく、兼務している状態です。設置要綱上では、構成員は各部局の課長になります。(図1) ただし、実務寄りの話をする場では担当者が出席することになります。

中平さん:事務局は県の環境森林部環境森林課が担当し、基本的に二名体制で運営しています。センターに加わったのは、適応策にあたる施策を実施している部署になります。議会に環境基本計画についての活動報告を行うにあたり各課の取組み状況をまとめていますが、この報告書の中で適応策を行っていると報告した部局に声をかけました。ただ、あくまで報告書に基づいて声がけしたため、実際には適応策を行っていても漏れてしまっている部局もあるかもしれません。今後はそういった部局も加えるようにしていきたいと考えています。

佐々木さん:声がけし、適応策を行っている部局の者がセンターの構成員となることで当事者意識を持つことにつながればよいのですが。現段階では各部局が事務局に適応策の状況について情報を提供し、事務局からは気象台や国立環境研究所からもらった情報を各部局に提供しています。

中平さん:気候変動適応という言葉は庁内でもまだ浸透していないため、国が作成した適応についてのパンフレットを持って声かけに回りました。センター加入に理解を示してくれた者からも、新たな業務が増えるのではという懸念の声がありました。そうした声には、事務局が提供する情報を業務に活かしていただきたいという説明を行いました。センター設置時点で多くの部局が参加してくれましたが、業務が増えるとなるとここまでうまくいかなかったのではないかと思います。

図1 宮崎県気候変動適応センター体制図

図1 宮崎県気候変動適応センター体制図
出典:宮崎県気候変動適応センター広報資料

適応策のさらなる推進に向けて

センターを設置し、これまでにどのような活動をされてきたのでしょうか。また、活動についての課題などあればお聞かせください。

宮崎県気候変動適応センター通信の写真

中平さん:情報発信、情報共有、事務局業務が主でしょうか。情報発信としては、気候変動の情報をまとめた適応センター通信を月一回発行しています。内容は既存のデータをまとめたもので、宮崎県の気候の特徴、気候変動の概要、将来予測、本県で実施している適応策を簡単に紹介しています。この適応センター通信は、一般の方にもご覧いただけるよう環境情報を掲載するウェブサイト、みやざきの環境に掲載しています。また、センターの構成員にも配布し、施策を検討する際の参考にしていただいています。宮崎気象台、福岡管区気象台からも連携のご連絡をいただき、データを提供いただいております。
また、国立環境研究所のメールマガジンをセンターの構成員と共有しています。

佐々木さん:適応センター通信を継続して発行することで、適応という考えが定着していけばと考えています。課題としては、独自の予算がないことが挙げられます。現在は環境森林部で持っている予算の中からやり繰りをして出張の旅費などを捻出している状態です。

今後、適応計画を作成していくことになると思いますが状況はいかがでしょうか。

中平さん:現在の計画は、環境基本計画の中に適応策を盛り込んでおり、単独で適応計画を設けてはいません。来年度が計画見直しの年に当たるため、現状分析・将来予測を含めて内容を充実させていきたいと思います。

今後の活動予定、今後活動する上での国立環境研究所への支援のご要望などありますでしょうか。

中平さん:他県の地域気候変動適応センターでは県民向けシンポジウム・研修会の開催、国民参加による気候変動情報収集・分析事業を活用し影響調査を行っています。将来的にはそういった活動も行っていきたいと思います。

佐々木さん:適応計画作成に関しては、情報提供を各部局に依頼することがあるのですが、集めるべきデータ一覧のようなものがあればありがたいです。また、私どもは専門知識がある訳ではないので作成した適応計画について助言をもらえるとありがたいです。

中平さん:いきなり細かな内容の計画を作るのは難しいと思いますが、現在カバーできていない分野については、現状分析、将来予測、現状の課題を盛り込んでいきたいと考えています。

この記事は2019年9月5日の取材に基づいて書いています。
(2019年11月11日掲載)

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