農業、森林・林業、水産業水産業の適応策

項目別の基本的な施策

適応海面漁業

魚様々な水産資源について、引き続き産卵海域や主要漁場における海洋環境についての調査を継続し、海洋環境の変動等による水産資源への影響等の把握に努める。
また、調査船や人工衛星等から得られる様々な観測データを同化する手法を高度化し、海況予測モデルの精度を高める。これら情報を元に、環境変動下における資源量の把握や予測、漁場予測の高精度化と効率化を図り、環境の変化に対応した順応的な漁業生産活動を可能とする施策を検討する。

今後は、マグロ類やカツオ等の国際的な取組による資源管理が必要とされる高度回遊性魚類については、気候変動の影響を受けて変動すると考えられる環境収容力等の推定を目的とし、資源情報、ゲノム情報、海洋情報等、多様なデータの収集と、それらデータの統合・解析システムの開発をめざす。

有害プランクトン大発生の要因となる気象条件、海洋環境条件を特定し、衛星情報や各種沿岸観測情報の利用による、リアルタイムモニタリング情報を関係機関に速やかに提供するシステムを構築する。

海洋環境の変化が放流後のサケ稚魚等の生残に影響する可能性があることから、海洋環境の変化に対応しうるサケ稚魚等の放流手法等を開発する。

[関係府省庁]農林水産省
適応海面養殖業

*写真海面養殖養殖業に大きな影響を及ぼす赤潮プランクトンの発生について、気候変動との関連性に関する調査研究を継続する。

今後は、メタゲノム解析技術等を利用して、新たな脅威となりつつある熱帯・亜熱帯性赤潮プランクトンの出現を高感度で探知できる手法を開発するとともに、これらプランクトンの生理・生態的特性を把握し、発生予察、予防技術、対策技術の開発に活用する。

海面養殖漁場における成長の鈍化等が懸念されるため、引き続き、高水温耐性等を有する養殖品種の開発等に取り組む。特に海藻類については、これまでに開発した細胞融合技術等によるノリの新規育種技術を用いた、高水温耐性を持った育種素材の開発や、ワカメ等の大型藻類の高温耐性株の分離等による育種技術の開発を進める。
 今後、高水温時に多発することが予測される魚病や水温上昇に伴って熱帯及び亜熱帯水域から日本へ侵入が危惧される魚病への対策指針を作成し、各種対策技術を開発する。

水温上昇によって、未知の魚病が発生する可能性が高くなると考えられるため、病原体が不明の感染症について、病原体の特定、診断、対策等、一連の技術開発を体系化・強化し、未知の魚病が発生した際に迅速に対応できるようにする。これまでにも各種魚病に対する多数のワクチンを開発してきたが、さらに多くの魚病へ対応できるワクチンを開発し、普及を図る。
 今後、これらの魚病対策と並行して、最新の育種技術を用いて、温暖化にともなって発生する各種魚病への抵抗性を示す家系を作出し、養殖現場への導入を図る。

以上の技術開発に加え、病原体の特性、ワクチンの作用機序、耐病性・抵抗性の分子機構等について明らかにしていくこととする。

アサリなどの二枚貝を食するナルトビエイなど水温上昇に伴い出現する種のモニタリングや生態調査をすすめ、生態系や養殖への悪影響を防ぐための管理技術を開発するとともに、地域振興に資する効率的な捕獲方法や利用技術ならびに高付加価値化技術の開発を進める。

沿岸域では海水のpHに影響する二酸化炭素分圧の日周変動の幅が大きいことが知られているが、生物への影響機構について未解明であることから、これを明らかにして二枚貝養殖等への酸性化の影響予測を行うとともに、予測に基づいた対策技術を開発する。

[関係府省庁]農林水産省
適応内水面漁業・養殖業

気候変動に伴う河川湖沼の環境変化がサケ科魚類、アユ等の内水面における重要資源の生息域や資源量に及ぼす影響評価に取り組む。

内水面養殖漁場における成長の鈍化等が懸念されるため、引き続き、高水温耐性等を有する養殖品種の開発等に取り組む。特に、高水温耐性を持つヤマメ個体の選別については、仔魚期の海水浸漬処理が有効であることが知られていることから、この技術の他のサケ科魚類への適用化をはかるなど、高水温耐性をもつ家系の作出をすすめる。

今後、高水温による漁獲量減少が予測されているワカサギについて、給餌放流技術を高度化するため、種苗生産の安定化、量産化および簡易化を目指し、餌料プランクトンの効率的生産技術の開発、種苗生産時の最適な飼育密度・餌料密度の解明、粗放的かつ大量生産可能な種苗生産技術の開発に取り組む。

高水温に由来する疾病の発生等に関する情報を収集する。水温上昇により被害の拡大が予測される内水面魚類の疾病については、病原体特性及び発症要因の研究とそれを利用した防除対策技術の開発を行う。

[関係府省庁]農林水産省
適応造成漁場

今後、海水温上昇による海洋生物の分布域・生息場所の変化を的確に把握し、それに対応した水産生物のすみかや産卵場等となる漁場整備に取り組む。

藻場造成に当たっては、現地の状況に応じ、高水温耐性種の播種・移植を行うほか、整備実施後は、藻の繁茂状況、植食性動物の動向等についてモニタリングを行い、状況に応じて植食性魚類の除去などの食害生物対策等を実施するなど、順応的管理手法を導入したより効果的な対策を推進する。

気候変動に適応した漁場造成の基盤として、これまで蓄積されてきた観測データならびに漁獲データ等を解析して気候変動が地先ごとの沿岸資源に及ぼす影響を評価する手法に関する技術開発を行う。

磯焼け原因生物の分布特性、食性、季節変化等を把握し、温暖化予測モデルを活用して、分布域や影響の変化を予測する。これらの食害に比較的強いと考えられる海藻を選定し、その増殖手法を開発する。

食害により藻場内に生じた空地に短期間で藻場を再生できるよう、混成藻場等の造成手法を開発する。

[関係府省庁]農林水産省
適応漁港・漁村

異常気象による高波の増加などに対応するため、気候変動による影響の兆候を的確に捉えるための潮位や波浪のモニタリングを行うとともに、防波堤、物揚場等の漁港施設の嵩上げや粘り強い構造を持つ海岸保全施設の整備等を引き続き計画的に推進する。

今後、背後地の社会経済活動及び土地利用の中長期的な動向を勘案して、ハード・ソフトの施策を最適な組み合わせ(ベスト・ミックス)で戦略的かつ順応的に進める。

水位上昇や高波の増加に対応したインフラ施設の設計条件と低コストな既存施設の改良手法を開発する。

[関係府省庁]農林水産省
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