自然生態系自然生態系への影響

項目別の影響

影響陸域生態系 
影響評価結果:
高山帯・亜高山帯 生態系への影響 重大性:特に大きい(環) 緊急性:高い 確信度:中程度
生態系サービスへの影響 重大性:現状では評価できない 緊急性:現状では評価できない 確信度:現状では評価できない
自然林・二次林 生態系への影響 重大性:特に大きい(環) 緊急性:中程度 確信度:高い
生態系サービスへの影響 重大性:現状では評価できない 緊急性:現状では評価できない 確信度:現状では評価できない
里地・里山生態系 生態系への影響 重大性:「特に大きい」とは言えない 緊急性:中程度 確信度:低い
生態系サービスへの影響 重大性:現状では評価できない 緊急性:現状では評価できない 確信度:現状では評価できない
人工林 生態系への影響 重大性:特に大きい(環) 緊急性:中程度 確信度:中程度
生態系サービスへの影響 重大性:現状では評価できない 緊急性:現状では評価できない 確信度:現状では評価できない
野生鳥獣による影響 生態系への影響 重大性:特に大きい(環) 緊急性:高い 確信度:現状では評価できない
生態系サービスへの影響 重大性:現状では評価できない 緊急性:現状では評価できない 確信度:現状では評価できない
物質収支 生態系への影響 重大性:特に大きい(環) 緊急性:中程度 確信度:中程度
生態系サービスへの影響 重大性:現状では評価できない 緊急性:現状では評価できない 確信度:現状では評価できない

現在の影響

写真高山帯・亜高山帯については、気温上昇や融雪時期の早期化等による植生の衰退や分布の変化が報告されている。

自然林・二次林については、気候変動に伴う分布適域の移動や拡大の現状について、現時点で確認された研究事例は限定的であるが、気温上昇の影響によって、過去から現在にかけて落葉広葉樹が常緑広葉樹に置き換わった可能性が高いと考えられている箇所がある。

人工林については、一部の地域で、気温上昇と降水の時空間分布の変化による水ストレスの増大により、スギ林が衰退しているという報告がある。

野生鳥獣による影響については、日本全国でニホンジカ等の分布が拡大していることが確認されており、気候変動の影響が推測されるが、狩猟による捕獲圧低下、土地利用の変化、積雪深の減少など、複合的な要因が指摘されている。

影響の将来予測

高山帯・亜高山帯については、その植物種について、分布適域の変化や縮小が予測されている。例えば、いずれのRCPシナリオでも、ハイマツは21世紀末に分布適域の面積が現在に比べて減少することが予測されている。また、地域により、融雪時期の早期化による高山植物の個体群の消滅も予測されている。

自然林・二次林については、A2シナリオ(1980~1999年平均を基準とした長期(2090~2099年)の変化量が2.0~5.4 °C(最良推定値3.4 °C))等を用いた予測では、冷温帯林の構成種の多くは、分布適域がより高緯度、高標高域へ移動し、分布適域の減少が予測されている一方、暖温帯林の構成種の多くは、分布適域が高緯度、高標高域へ移動し、分布適域の拡大が予測されている。

人工林については、現在より3 °C気温が上昇すると、年間の蒸散量が増加し、特に降水量が少ない地域で、スギ人工林の脆弱性が増加することが予測されているが、正確な予測のためには今後更なる研究を進めていく必要がある。

野生鳥獣による影響については、気温の上昇や積雪期間の短縮によって、ニホンジカなどの野生鳥獣の生息域が拡大することが予測されているが、研究事例は少数である。

今後、鳥インフルエンザの我が国への主な侵入要因と考えられる渡り鳥の飛行経路や飛来時期に変化が生じることで、我が国への鳥インフルエンザの侵入リスクに影響を与える可能性がある。

気候変動に伴う里地・里山生態系及び物質収支への影響については、現時点で網羅的な研究事例は限定的である。

影響淡水生態系
影響評価結果:
湖沼 生態系への影響 重大性:特に大きい(環) 緊急性:中程度 確信度:低い
生態系サービスへの影響 重大性:現状では評価できない 緊急性:現状では評価できない 確信度:現状では評価できない
河川 生態系への影響 重大性:特に大きい(環) 緊急性:中程度 確信度:低い
生態系サービスへの影響 重大性:現状では評価できない 緊急性:現状では評価できない 確信度:現状では評価できない
湿原 生態系への影響 重大性:特に大きい(環) 緊急性:中程度 確信度:低い
生態系サービスへの影響 重大性:現状では評価できない 緊急性:現状では評価できない 確信度:現状では評価できない

現在の影響・影響の将来予測

湖沼については、現時点で日本における影響を定量的に予測した研究事例は確認できていないものの、富栄養化が進行している深い湖沼では、水温の上昇による湖沼の鉛直循環の停止・貧酸素化と、これに伴う貝類等の底生(ていせい)生物への影響や富栄養化が懸念される。

また、室内実験により、湖沼水温の上昇やCO2濃度上昇が、動物プランクトンの成長量を低下させることが明らかになっている。

河川については、我が国の河川は取水や流量調節が行われているため気候変動による河川の生態系への影響を検出しにくく、現時点で気候変動の直接的影響を捉えた研究成果は確認できていないが、全国一律で最高水温が現状より3 °C上昇すると、冷水魚が生息可能な河川が分布する国土面積が本州を中心に現在と比較して減少することが予測されている。

写真湿原については、湿原の生態系は気候変動以外の人為的な影響を強く受けており、気候変動の影響を直接的に論じた研究事例はないものの、一部の湿原で、気候変動による降水量の減少や湿度低下、積雪深の減少が乾燥化をもたらした可能性が指摘されている。また、降水量や地下水位の低下による高層湿原における植物群落(しょくぶつぐんらく)(ミズゴケ類)への影響、気候変動に起因する流域負荷(土砂や栄養塩)に伴う低層湿原における湿地性草本群落(そうほんぐんらく)から木本群落(もくほんぐんらく)への遷移等が想定される。

影響沿岸生態系
影響評価結果:
亜熱帯 生態系への影響 重大性:特に大きい(環) 緊急性:高い 確信度:中程度
生態系サービスへの影響 重大性:現状では評価できない 緊急性:現状では評価できない 確信度:現状では評価できない
温帯・亜寒帯 生態系への影響 重大性:特に大きい(環) 緊急性:高い 確信度:中程度
生態系サービスへの影響 重大性:現状では評価できない 緊急性:現状では評価できない 確信度:現状では評価できない

現在の影響

亜熱帯地域では、海水温の上昇等によりサンゴの白化現象が既に発現している。また、太平洋房総半島以南と九州西岸北岸におけるサンゴの分布が北上している。

温帯・亜寒帯では、日本沿岸の各所において、海水温の上昇に伴い、低温性の種から高温性の種への遷移が進行していることが確認されている。

影響の将来予測

写真将来予測される影響としては、亜熱帯については、A2シナリオ(1980~1999年平均を基準とした長期(2090~2099年)の変化量が2.0~5.4 °C(最良推定値3.4 °C))では、造礁サンゴの生育に適する海域が水温上昇と海洋酸性化により2030年までに半減し、2040年までには消失すると予測されている。

温帯・亜寒帯については、海水温の上昇に伴い、エゾバフンウニからキタムラサキウニへといったより高温性の種への移行が想定され、それに伴い生態系全体に影響が及ぶ可能性があるが、定量的な研究事例は限定されている。

影響海洋生態系
影響評価結果:
海洋生態系 生態系への影響 重大性:特に大きい(環) 緊急性:中程度 確信度:低い
生態系サービスへの影響 重大性:特に大きい(社) 緊急性:現状では評価できない 確信度:低い

現在の影響・影響の将来予測

日本周辺海域ではとくに親潮域と混合水域において、植物プランクトンの現存量と一次生産力の減少が始まっている可能性がある。ただし、未だ統一的な見解には収束していない。

気候変動に伴い、植物プランクトンの現存量に変動が生じる可能性があるが、日本周辺海域については、モデルの信頼性が低く、変化予測は現状困難である。また、これにより生じる地域毎の影響の予測は現時点では困難である。

影響生物季節
影響評価結果:
生物季節 生態系への影響 重大性:「特に大きい」とは言えない 緊急性:高い 確信度:高い
生態系サービスへの影響 重大性:現状では評価できない 緊急性:現状では評価できない 確信度:現状では評価できない

現在の影響

写真植物の開花の早まりや動物の初鳴きの早まりなど、動植物の生物季節の変動について多数の報告が確認されている。

影響の将来予測

A2シナリオ(1980~1999年平均を基準とした長期(2090~2099年)の変化量が2.0~5.4 °C(最良推定値3.4 °C))を前提とした開花モデルによれば、生物季節の変動について、ソメイヨシノの開花日の早期化など、様々な種への影響が予測されている。また、個々の種が受ける影響にとどまらず、種間のさまざまな相互作用への影響が予想されている。

影響分布・個体群の変動
影響評価結果:
在来種 生態系への影響 重大性:特に大きい 緊急性:高い 確信度:高い
生態系サービスへの影響 重大性:現状では評価できない 緊急性:現状では評価できない 確信度:現状では評価できない
外来種 生態系への影響 重大性:特に大きい 緊急性:高い 確信度:中程度
生態系サービスへの影響 重大性:現状では評価できない 緊急性:現状では評価できない 確信度:現状では評価できない

現在の影響

写真分布の北限が高緯度に広がるなど、気候変動による気温の上昇の影響と考えれば説明が可能な分布域の変化、ライフサイクル等の変化の事例が確認されている。

ただし、気候変動以外の様々な要因も関わっているものと考えられ、どこまでが気候変動の影響かを示すことは難しい。

影響の将来予測

将来予測される影響としては、気候変動により、分布域の変化やライフサイクル等の変化が起こるほか、種の移動・局地的な消滅による種間相互作用の変化がさらに悪影響を引き起こす、生育地の分断化により気候変動に追随した分布の移動ができないなどにより、種の絶滅を招く可能性がある。

また、気候変動による外来種の侵入・定着に関する研究事例は現時点では確認されていないが、侵入・定着率の変化に繋がることが想定される。

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