「重大性」「緊急性」「確信度」の考え方

中央環境審議会「日本における気候変動による影響の評価に関する報告と今後の課題について」(意見具申)では、気候変動による影響に対して、「重大性」「緊急性」「確信度」の3つについて次の通り判断しました。

出典:環境省(2015)「『日本における気候変動による影響の評価に関する報告と今後の課題について』(中央環境審議会意見具申)」

重大性の評価の考え方

  • 「社会」「経済」「環境」の3つの観点から評価を行った。
  • 研究論文等の内容を踏まえるなど科学に基づいて行うことを原則としつつ、専門家判断(エキスパート・ジャッジ)により、「特に大きい」又は「『特に大きい』とは言えない」の評価を行った。
  • 現状では評価が困難なケースは「現状では評価できない」とした。
  • 緩和を通じたリスク低減の可能性は、取りまとめた影響ごとに評価することは困難であることから検討を行わないが、適応を通じたリスク低減の可能性については、参考情報として必要に応じて記述した。

○ IPCC 第5次評価報告書における主要なリスクの特定の基準

  • 影響の程度(magnitude)
  • 可能性(probability)
  • 不可逆性(irreversibility)
  • 影響のタイミング(timing)
  • 持続的な脆弱性又は曝露(persistent vulnerability or exposure)
  • 適応あるいは緩和を通じたリスク低減の可能性(limited potential to reduce risks through adaptation or mitigation)
重大性の評価の考え方
評価の観点 評価の尺度(考え方) 最終評価の示し方
マーカー 特に大きい マーカー「特に大きい」とは言えない
以下の切り口をもとに、社会、経済、環境の観点で重大性を判断する
  • 影響の程度(エリア・期間)
  • 影響が発生する可能性
  • 影響の不可逆性(元の状態に回復することの困難さ)
  • 当該影響に対する持続的な脆弱性・曝露の規模
重大性の程度と、重大性が「特に大きい」の場合は、その観点を示す
1.社会 以下の項目に1つ以上当てはまる
  • 人命の損失を伴う、もしくは健康面の負荷の程度、発生可能性など(以下「程度等」という)が特に大きい例)人命が失われるようなハザード(災害)が起きる
  • 多くの人の健康面に影響がある
  • 地域社会やコミュニティへの影響の程度等が特に大きい例)影響が全国に及ぶ
  • 影響は全国には及ばないが、地域にとって深刻な影響を与える
  • 文化的資産やコミュニティサービスへの影響の程度等が特に大きい例)文化的資産に不可逆的な影響を与える
  • 国民生活に深刻な影響を与える
「特に大きい」の判断に当てはまらない
2.経済 以下の項目に当てはまる
  • 経済的損失の程度等が特に大きい例)資産・インフラの損失が大規模に発生する
  • 多くの国民の雇用機会が損失する
  • 輸送網の広域的な寸断が大規模に発生する
「特に大きい」の判断に当てはまらない
3.環境 以下の項目に当てはまる
  • 環境・生態系機能の損失の程度等が特に大きい例)重要な種・ハビタット・景観の消失が大規模に発生する
  • 生態系にとって国際・国内で重要な場所の質が著しく低下する
  • 広域的な土地・水・大気・生態系機能の大幅な低下が起こる
「特に大きい」の判断に当てはまらない

緊急性の評価の考え方

  • 「影響の発現時期」*1 と「適応の着手・重要な意思決定が必要な時期」*2 の双方の観点を加味し、どちらか緊急性が高いほうを採用することとした。
    なお、適応には長期的・継続的に対策を実施すべきものもあるため、「適応の着手・重要な意思決定が必要な時期」の観点においては、対策に要する時間を考慮する必要がある。
  • また、現状では評価が困難なケースは「現状では評価できない」とした。
  • *1 IPCC 第5次評価報告書による
  • *2 英国の気候変動リスク評価(CCRA: Climate Change Risk Assessment)による
緊急性の評価の考え方
評価の観点 評価の尺度 最終評価の示し方
マーカー 緊急性は高い マーカー 緊急性は中程度 マーカー 緊急性は低い 1及び2の双方の観点からの検討を勘案し、小項目ごとに緊急性を3段階で示す。
1.影響の発現時期 既に影響が生じている。 2030 年頃までに影響が生じる可能性が高い。 影響が生じるのは2030 年頃より先の可能性が高い。又は不確実性が極めて大きい。
2.適応の着手・重要な意思決定が必要な時期 できるだけ早く意思決定が必要である。 2030 年頃より前に重大な意思決定が必要である。 2030 年頃より前に重大な意思決定を行う必要性は低い。

確信度の評価の考え方

  • 確信度の評価は、「証拠の種類、量、質、整合性」と「見解の一致度」に基づき行われ、「非常に高い」「高い」「中程度」「低い」「非常に低い」で表現される。
  • 証拠の種類:現在までの観測・観察、モデル、実験、古気候からの類推などの種類
  • 証拠の量:研究・報告の数
  • 証拠の質:研究・報告の質的内容(合理的な推定がなされているかなど)
  • 証拠の整合性:研究・報告の整合性(科学的なメカニズム等の整合性など)
  • 見解の一致度:研究・報告間の見解の一致度
出典:IPCC (2013) 第5次評価報告書 第1作業部会報告書
図1

証拠と見解の一致度の表現とその確信度との関係。確信度は右上にいくほど増す。一般に、整合性のある独立した質の高い証拠が複数揃う場合、証拠は最も頑健となる。

出典:IPCC(2010)統一的な不確実性の扱いに関するIPCC 第5次評価報告書主執筆者のためのガイダンスノート
  • ここでは、IPCC 第5次評価報告書と同様「証拠の種類、量、質、整合性」及び「見解の一致度」の2つの観点を用いる。「証拠の種類、量、質、整合性」については、総合的に判断することとなるが、日本国内では、将来影響予測に関する研究・報告の量そのものがIPCC における検討に比して少ないと考えられるため、一つの考え方・物差しとしては、定量的な分析の研究・報告事例があるかどうかという点が判断の材料になりうる。
  • 評価の段階として、十分な文献量を確保できない可能性があることから、「高い」「中程度」「低い」の3段階の評価とした。
  • 確信度の評価の際には、前提としている気候予測モデルから得られた降水量などの予測結果の確からしさも踏まえた。
  • 現状では評価が困難なケースは「現状では評価できない」とした。
表4 確信度の評価の考え方
評価の視点 評価の段階(考え方) 最終評価の示し方
マーカー 確信度は高い マーカー 確信度は中程度 マーカー 確信度は低い IPCCの確信度の評価を使用し、小項目ごとに確信度を3段階で示す。
IPCCの確信度の評価
  • 研究・報告の種類・量・質・整合性
  • 研究・報告の見解の一致度
IPCCの確信度の「高い」以上に相当する。 IPCCの確信度の「中程度」に相当する。 IPCCの確信度の「低い」以下に相当する。
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