水環境・水資源水環境・水資源の適応策

項目別の基本的な施策

適応水環境

気候変動に伴う水質等の変化が予測されていることを踏まえ、水質のモニタリングや将来予測に関する調査研究を引き続き推進するとともに、水質保全対策を推進する。具体的には、水環境全般において、気候変動に伴う水温上昇など水域の直接的な変化だけでなく、流域からの栄養塩類等の流出特性の変化に関する調査や、下水道の高度処理、合流式下水道改善対策等の水質保全対策を引き続き推進するとともに、以下の個別の取組を行う。

湖沼・ダム湖における取組

*写真:水環境水温上昇や降雨の変化に伴う植物プランクトンの変化や水質の悪化が想定される湖沼では、工場・事業場排水対策、生活排水対策などの流入負荷量の低減対策を推進するとともに、植物プランクトンの変動を適切に把握するためのモニタリング体制を強化する。

湖沼における水温変化に伴う底層環境変化の検討、底層貧酸素化や赤潮、青潮の発生リスクに関する将来予測を行う。

深い成層湖沼で水温変化による冬季の全循環不全が予測される場合には、底層DO(溶存酸素)の改善のための適切な対策を検討する。

これまでの検討を踏まえ、全国の湖沼を対象に適切な適応策を検討するとともに、最新の科学的な知見の把握や、予測の精度の向上を図り、その結果を踏まえて、必要に応じて追加的な措置を検討する。

貯水池(ダム湖)については、選択取水設備、曝気循環設備等の水質保全対策を引き続き実施するとともに、気候変動に伴う水質の変化に応じ水質保全設備の運用方法の見直し等を検討する。

河川における取組

*写真:水環境気候変動が河川環境等に及ぼす影響について、特定の河川において水質、水温の変化を予測する研究は一部で進められているが、現時点では研究事例が十分ではなく、確信度が低いと評価されていることから、河川環境全体の変化等を把握、予測することは現段階では困難な状況である。このため、引き続き水質のモニタリング等を行いつつ、科学的知見の集積を図る。

沿岸域及び閉鎖性海域における取組

気候変動が水質、生物多様性等に与える影響や適応策に関する調査研究を推進し、科学的知見の集積を図る。
 港湾域、内湾域における水温変化に伴う底層環境変化の検討や、底層貧酸素化や赤潮、青潮の発生リスクの将来予測に関する検討を行う。

[関係府省庁]国土交通省、環境省
適応水資源

渇水による被害を防止・軽減するための対策をとる上で前提となる既存施設の水供給の安全度と渇水リスクの評価を行い、国、地方公共団体、利水者、企業、住民等の各主体が渇水リスク情報を共有し、協働して渇水に備える。

渇水に対する適応策を推進するため、関係者が連携して、渇水による影響・被害の想定や、渇水による被害を軽減するための対策等を定める渇水対応タイムライン(時系列の行動計画)の作成を促進する。

災害リスクの評価

住民や企業等が自ら渇水への備えに取り組むため、既存施設の水供給の安全度を評価するとともに、関係者間で、渇水の初期から徐々に深刻化していく状況とそれに応じた社会経済活動、福祉・医療、公共施設サービス、個人生活等への影響・被害の想定などの渇水リスクを評価し、これらを分かりやすい表現で提示して、国、地方公共団体、利水者、企業、住民等で共有する。

1.比較的発生頻度の高い渇水による被害を防止する対策

既存施設の徹底活用等

水資源開発施設の整備が必要な地域において水資源開発の取組を進めるとともに、ダムの嵩上げ、貯水池の堆積土砂の掘削・浚渫等による既存施設の機能向上等の可能性を検討する。
 老朽化対策等を着実に実施するなど、維持管理・更新を計画的に行うことで既存施設の機能を維持していく。
 各ダムの貯水・降水状況等を勘案した上で、同一流域内の複数のダムの統合運用等、ダムの効率的な運用の可能性を検討する。

雨水(あまみず)・再生水の利用

*写真:水環境雨水の利用の推進に関する法律の施行等を踏まえ、雨水利用のための施設の設置を促進するため、計画、設計に係る技術基準類の改定に向けた検討を進める。

地域のニーズ等に応じ、下水処理場に給水栓等の設置を進め、道路維持用水や樹木散水等を含め、緊急時にも下水処理水の利用を促進するとともに、我が国が有する水の再利用技術の国際標準化を含めた規格化の検討による水の再利用を促進する。

情報提供・普及啓発

関係機関や報道機関と連携し、通常時及び渇水のおそれのある早い段階からの情報発信と節水の呼びかけを促進する。
 水の有効利用を促進するため、水の重要性や大切さについて国民の関心や理解を深めるための教育、普及啓発活動等を行う。

2.施設の能力を上回る渇水による被害を軽減する対策

関係者が連携した渇水対策の体制整備等

関係者間で、渇水時における水融通・応援給水体制をあらかじめ検討するほか、渇水対策の検討を支援するガイドラインを作成することで、関係者が連携し、徐々に深刻化していく渇水の被害を軽減するための対策等を定める渇水対応タイムラインの策定を促進する。

中長期的な降水等の予測情報の活用を含めた渇水予測技術の向上を図り、前述の渇水対応タイムラインに示した渇水による影響、被害想定等を基に、状況に応じた取水制限の前倒し実施等の可能性を検討する。

危機的な渇水の被害を最小とするための対策

危機的な渇水に備えるため、既存施設の水供給の安全度と渇水リスクの評価を行い、想定される社会経済活動、福祉・医療、公共施設サービス、国民生活等への影響・被害を踏まえた上で、政府一体となった対応や企業等における渇水の対応、応援給水などの供給先の優先順位の設定等について検討する。

渇水時の河川環境に関するモニタリングと知見の蓄積

渇水時の河川流量の減少により、河川に生息・生育する水生動植物等の生態系や水質など河川環境に影響が生じる懸念があるため、渇水時の河川環境に関するモニタリングを実施し、知見の蓄積を図る。

渇水時の地下水の利用と実態把握

地下水は、平常時における利用だけではなく、渇水時における緊急的な代替水源の一つとして利用することが期待できる。しかし、地下水を過剰に採取することは、地盤沈下や塩水化等の地下水障害を生じさせるおそれがあり、また、これらの地下水に係る現象は一般的に地域性が高い。このため、地方公共団体等の地域の関係者が主体となり、地域の実情に応じた持続可能な地下水の保全や利用のためのルールの検討など、地下水マネジメントに取り組む。

国は緊急的な代替水源としての地下水利用について検討できるよう、地下水の実態把握に関する技術開発を行うとともに、国や地方公共団体等が収集する地下水の各種データを相互に活用するための共通ルールの作成等の環境整備を行う。

これらのデータを活用し、地下水収支や地下水挙動、地下水採取量と地盤沈下や塩水化等の関係の把握に努める。

3.農業、森林・林業分野における対策

*写真:水環境農業分野では、用水管理の自動化や用水路のパイプライン化等による用水量の節減、ため池・農業用ダムの運用変更による既存水源の有効活用を図るなど、ハード・ソフト対策を適切に組み合わせ、効率的な農業用水の確保・利活用等を推進する。

ダム上流等の重要な水源地や集落の水源となっている保安林において、浸透・保水能力の高い森林土壌を有する森林の維持・造成を図っていくとともに、渇水の発生リスク等を踏まえ、森林の水源涵養機能が適切に発揮されるよう、流域特性に応じた森林の整備・保全、それらの整備に必要な林道施設の整備を推進する。

4.調査研究の推進

気候変動による水資源への影響や社会への影響を含めた渇水リスクについて調査・研究を推進する。
 地下水の存在する地下構造は、極めて地域性が高く多様性に富んでいることから、地下水の賦存状況、収支や挙動、地表水と地下水の関係等、未解明な部分の研究を推進するとともに、気候変動による地下水への影響について、調査・研究を進める。
 諸外国の水銀行制度や緊急の節水策としての課金制度について現状を調査するとともに、その適用性について調査・研究を推進する。

[関係府省庁]厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省
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