将来予測成果をご覧になる際の注意点

将来予測には不確実性があります

将来予測にはさまざまな不確実性(①将来の温室効果ガス排出量の不確実性、②気候変動予測の不確実性、③影響評価地球温暖化予測)があることにご留意いただいた上で、ご利用ください。

①に関しては、温暖化対策(緩和策)の達成度合いに大きく左右します。IPCC第5次評価報告書では、RCP2.6、RCP4.5、RCP6.0、RCP8.5の4つのシナリオ、IPCC第6次評価報告書では、将来の社会経済の発展の傾向を仮定した共有社会経済経路(SSP)シナリオと放射強制力のシナリオを組み合わせたSSP1-1.9、SSP1-2.6、SSP2-4.5、SSP3-6.0、SSP5-8.0の主に5つのシナリオが使用されており、どのシナリオを選択するかで予測結果が異なります(※1)。気候予測や影響評価の予測結果を利用するときには、どのシナリオを用いたものであるか留意する必要があります。
②に関しては、ひとつに気候モデルの応答の不確実性があります。気候モデルによって組み込まれている物理法則の近似や仮定の手法が異なるため、気候モデルによって計算結果に差異が生じます。気候モデルごとのばらつき具合、個々の気候モデルの予測結果はどの辺に位置を考慮する必要があります(※2)。そのほか気候変動予測の不確実性の詳細については関連ページをご参照ください。
③に関しては、モデルや手法に不確実性が含まれることや、同じ影響項目を評価する際、異なるモデルを用いている場合には、モデル間の不確実性にも留意が必要です。

本サイトに掲載されている気候予測や影響評価の情報を引用する場合は、その情報が唯一無二の値ではなく、様々な不確実性を含んだものであることをきちんと解説しておくことが重要となります。

世界平均地上気温変化
世界平均地上気温変化

※1 左:IPCC第5次評価報告書第1作業部会報告書政策決定者向け要約(気象庁翻訳)を改編
   (https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar5/ipcc_ar5_wg1_spm_jpn.pdf
   右:IPCC第6次評価報告書第1作業部会報告書政策決定者向け要約(気象庁翻訳)
   (https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar6/IPCC_AR6_WG1_SPM_JP_20220512.pdf

日本域における地上気温と年間降水量の時系列変化

※2 日本域における地上気温と年間降水量の時系列変化。
   参照:統計的ダウンスケーリングによる詳細な日本の気候予測情報を公開
   ~日本で初めて第6期結合モデル相互比較プロジェクト(CMIP6)に準拠~
   (https://www.nies.go.jp/whatsnew/20210628/20210628.html

活用時には基準期間や将来期間を明記してください

本ページで示している将来予測において、ともに日本における予測成果ですが、基準期間と将来予測期間がそれぞれ異なるため、比較する際には注意が必要です。それぞれの成果における、基準期間と将来予測期間については【将来予測データ(WebGIS)の指標一覧と入手方法】のページに記載しています 。予測成果をご活用いただく際には、必ずこれらの期間を明記していただきますようよろしくお願いいたします。

また、世界における平均地上気温変化を参照する際にも注意が必要です。IPCC第5次評価報告書によりますと基準期間1986~2005 年平均に対する21世紀末(2081~2100年)までのRCP2.6で0.3~1.7℃、RCP8.5で2.6~4.8℃上昇するとそれぞれ予測されています(※1左)この予測値をもとに、パリ協定で掲げられた目標である「産業革命前からの気温上昇を2℃未満に抑える」ことを考える場合には、基準期間を合せる必要があるのです。IPCC第5次評価報告書での基準期間(1986~2005 年)であれば0.61℃を加算することにより、便宜的に産業革命前比(1850~1900年)に補正した将来予測気温を求めることができます(※1左、※3)。

※3 Sun et al., 2017, Exposure of population to droughts in the HaiheRiver Basin under global warming of 1.5 and 2.0 oCscenarios, Quaternary International, 453, 74-84.

(最終更新日:2022年5月24日)

ページトップへ