Forestry Commission England
イングランド森林委員会

優先リスクの選定に基づく気候変動リスク評価

掲載日 2017年4月14日
分野 農業・林業・水産業 / 自然生態系

組織概要

森林委員会(Forestry Commission)は環境食料農村地域省(Department for Environment, Food and Rural Affairs、Defra)の関連組織であり、森林の保全、整備、拡大や、人々の森林への関わりの促進、林業振興に責任を持つ。英国内では258,000 haの林地を所有・管理している(以下、公有林地)。イングランド森林委員会(Forestry Commission England)は、イングランドにおける森林規制の実施、公有林地の管理、助成事業の実施、専門的助言の提供のほか、市街地の樹木を増やす取組、地球温暖化対策、野外レクリエーション活動の提供等を行っている。

イングランド森林委員会

適応に関する取り組みの概要

優先リスクの選定

  • 既存調査・研究の成果を参考にしながら森林に関する気候変動リスクを抽出し、その妥当性をイングランド森林委員会のスタッフや林業関係者等に確認した。影響の確信度や重大性、対策の緊急性等により各リスクの優先度を評価し(表1)、政府関係者、市民団体、民間企業、森林管理者等が参加するワークショップにおいて優先リスクの確認を行っている。
    表1. 優先リスクの評価方法
    (左の列は上から、確信度、影響の重大性、対策の緊急性、総合リスク、影響の発現時期、コスト)
    表1 優先リスクの評価方法
  • 優先リスクとして、適域の変化、針葉樹の減少、樹木の病気、野生動物による食害、野生生物の増加等が選定されている。

リスク評価の結果

  • 優先リスクに基づき、気候変動による公有林地への影響と、イングランド森林委員会業務への影響についてリスク評価が行われている。
  • 公有林地内の森林への影響:英国気候影響プログラム(UK Climate Impacts Programme 2002: UKCIP02)の高排出シナリオを前提とし、適応策を講じない場合の公有林地の植生の適切性が評価されている。その結果、長期的(2080年代)には、公有林地の樹木全体の38%のみが、気候及び土壌の性質上適切な場所に生育しているという結果が得られ(図1)、特に針葉樹において深刻な結果となった。また、木材の生産性も35%程度悪化するとの結果を得ている。
    図1. 公有林地における森林の適切性評価(UKCIP02高排出シナリオ)
    表 適応策の抽出(Responding)取りまとめ表の一部
    (縦軸は公有林地に占める割合、横軸は年代、棒グラフの赤色は不適当、黄色は僅かに適当、黄緑色は適当、緑色はとても適当)
  • 公有林地の管理業務への影響:公有林地に適する種の変化、樹木の病気、土壌中の水分量の変化、木材生産量の減少、雨量の変化によるインフラ施設への影響、野生動物の死亡率の低下、公有林地を訪れる人々の意識等の変化への対応がリスクとして特定されている。
  • 助成事業、規制実施業務への影響:助成対象の森林で気候変動対策が進まないことによる森林機能の低下等のリスクが特定されている。
  • 組織への影響:樹木の病気への対策強化、気候変動を考慮することによる組織運営法の変化等のリスクが特定されている。

適応策に関する計画等

Defraによる気候変動アクションプラン(2011年更新)の森林分野の取組のうち、公有林地の気候変動アクションプラン、森林規格に関する気候変動ガイドライン・指針が策定され、イングランド森林委員会が民間セクターや市民団体と適応の取組を進める森林カーボンタスクフォースも設置されている。今後、2013年以降の農村振興計画(Rural Development Programme)及び共通農業政策に森林の適応策も含めた気候変動対策を組み込む方針である。

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