Network Rail Limited
ネットワーク・レイル

気候変動リスク調査及び、蝶ネクタイ型リスク評価による、適応策・管理策の検討・実施

掲載日 2016年12月2日
分野 自然災害・沿岸域 / 産業・経済活動 / 国民生活・都市生活

会社概要

ネットワーク・レイルは、英国のイングランド・スコットランド・ウェールズの鉄道・貨物輸送の運営や施設管理を担う公営企業である。

ネットワーク・レイル

適応に関する取組の概要

気候変動影響のリスク評価

  • 2009年に、気候変動による将来的なリスクと現状の管理策の把握のため、気候変動リスク調査を行なった。その結果、気温の上昇・低下、洪水の増加、河川流量の変化、降雨量の増加・減少、強風、海面上昇、四季の変化、雷等の異常気象に関する気候変動リスクが予測された。
  • これらのリスクに対する具体的な適応策として、植生管理プロジェクトを通した強風や粘着式鉄道の対策、排水管理の改善、天気予報サービスの強化・改善、雷検出・測距技術の使用等が実施されている。
  • 電車・貨物輸送の運行に問題が起きた際の補償金(Schedule 8 cost)の統計データに基づき実施された列車の運行におけるリスク調査では、洪水・土砂災害・強風に関連した災害への対策が最も優先度が高く、次に気温上昇・海面上昇・粘着式鉄道、そして最も優先度が低いとされたのは、雪・気温低下・雷・霧に関連した災害への対策であった。
  • 2013年には、会社幹部により構成される執行委員会により気象現象に対する強靭化と気候変動に関するプログラム(Weather Resilience and Climate Change Adaptation: WRCCA)が開始された。気候変動による影響を緩和し、リスクを低減させることを目的に、下図の蝶ネクタイ型リスク評価に基づき、アングリアやサウス・イースト、スコットランド等のルートごとにWRCCA計画を策定している。各ルートのWRCCA計画は、3ヶ月ごとに執行委員会が評価・確認を行っている。
    図1. 蝶ネクタイ型リスク評価
    図1. 蝶ネクタイ型リスク評価
    結び目は危険因子(気象現象がもたらす障害)、左側は危険因子を引き起こす可能性がある要因、右側は危険因子の引き起こす結果を表す。
  • 具体的には、WRCCA計画は、下図のように6つのプログラムと、その中の23の項目から構成され、各ルートはそれぞれのプログラムの取組等を示した報告書を作成している。
    図2. WRCCAプログラムの構成図
    図2. WRCCAプログラムの構成図
    1.インフラの強靭化、2.関連産業の強靭化、3.健全な土木工事、4.気象現象への対応、5.気候変動への適応、6.情報の活用の6つのプログラムで構成される。

スコットランドにおけるWRCCA計画

  • スコットランドは、スコットランド低地からバレン高地、大都市から地方、と変化に富んだ地形を有している。
  • スコットランドを走るルートの脆弱性として、強風、豪雨、洪水が挙げられる。遅延により発生する費用の半分はそれらの影響によるものである。
  • 特に強風の影響を受けやすく、強風時に架空送電線上に侵入した様々な障害物(風船等)に対処する必要がある。
  • 冬季におけるリスク管理として、積雪による結合部の圧縮や、架空送電線の氷結、厳冬中の従業員の労働環境等が問題として挙げられている。冬季の労働環境改善のため、従業員は定期的にスコットランドインフラ管理センターへインフラの整備状況等を報告することが義務付けられている。

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