Staff interview #11
キム ジユン(KIM Jiyoon)

気候変動適応センター 気候変動影響観測研究室 特別研究員。2019年10月入所。
生物学,生物工学,情報学を専門とする。生まれは大韓民国の釜山広域市。趣味は登山で、筑波山と霞ケ浦には月に1回訪れる。

はじめに、日本で研究をすることになったきっかけを教えてください。

きっかけは、2年前の2018年に国際カンファレンスで西廣さん(現 気候変動影響観測研究室室長)に出会ったことです。西廣さんの研究室で、湿地の生態研究を拡張したくて日本に来ました。 1年半後の2019年に西廣さんが国環研の気候変動適応センター(CCCA)に移籍することになり、「研究を続けたい!」という想いから私もCCCAに勤務することにしました。つくば市は、たくさんの研究所以外何もないと言われて来ましたが・・・(笑)住みやすいところですね。日本に来る前は出身地の釜山市で進学し研究に努めていました。

具体的にどのような研究をされていますか?

私の専門は水生生態系です。過去の記録と環境シナリオを用いた植物機能群の空間分布の将来予測に取り組んでいます。さまざまな種類の科学文献から過去のコミュニティ記録を統合し、植物コミュニティデータを収集するためのフィールド調査を行っています。

なぜその研究をCCCAですることになったのですか?また「生態系」に関心を持ったきっかけはありますか?

そうですね、私のPh.D.としての研究と気候変動の研究分野の関係はきっても切り離せないというところが大きいです。私の研究分野は長期にわたるデータを用いて、先のことを予測します。気候も特定の期間で変わるので、研究に関与する(影響する)大切な要素です。昨今は特に変化が大きいですよね・・・。
他の分野の研究やプロジェクトでは、数年で研究が終わることもありますが、私の研究は100年後どうなっているか、どの事象が大切かを予測します。過去に遡るほど、データには限りがあることも多いので、そこには困難を感じています。

「生態系」に関心を持ったきっかけはやはり故郷のことがあります。 私は幼い頃、田舎の祖母の家(慶尙南道固城(ゴソン)郡)で多くの時間を過ごしました。地元でも昔なら十数種類いた水辺に生息する生き物が目に見えて減っていたり、花木の多様性もなくなっていたりといった変化が感じられます。地域で有名だった果物も、温度変化により栽培できなくなったものもあります。そういった実体験からもこの分野への関心が高いです。

キムさんはCCCAでの研究を通してどのような成果を期待していますか?

繰り返しになりますが、私がやっている分野は長期の観察が必要な分野です。過去と現在、活用可能な研究データを広範囲に統合し、気候変動と人為的攪乱の影響を評価するのに貢献できればと思います。また、研究所の皆さんの研究ジャンルも多岐にわたるので、コラボレーションがもっとできたらクリエイティブでおもしろそうだなと考えています!

ここからは韓国での様子についても教えてください。「気候変動」の影響は韓国ではどのようにとらえられていると思いますか?「適応」といった言葉や「環境」に関する課題への人々の意識はどうでしょうか?

韓国と日本で、人々の「環境」や「気候変動」、「適応」といった言葉への意識は、そんなに変わりないと思います。昨今の夏の異常な暑さや雨の多さに皆がおかしいと気が付いて、充分でないとは思いますが人々は意識して行動しようとしていると思います。韓国も日本の政府も温室効果ガスの削減目標を立てたりしていますよね。
友人や家族と「適応」についてはほとんど話しませんが、韓国人は「気候変動」や「エコ」に対する意識は高いです。あとはリサイクルやごみのことを話します。最近だと消費者は、環境に良いプロダクトを作っている企業から購入しようとする動きがみられると思います。

CCCAは、一般の方に向けてもA-PLATで環境問題を考えるによいコンテンツをたくさん紹介していますので、そこから情報を得ることができますね!

日本での暮らしで大変なことはありますか?

言葉や文化の面でいうと、日本の方はストレートに物を言わないことがあるので、間違った理解をする場合があります。外国人には意味が分かりにくい部分もあるので、研究の場面ではストレートな発信が必要ですよね。もっと活発な研究のために日本語の勉強ももっと頑張ります。

最後に、コロナ禍で在宅勤務になり時間に余裕ができたときは、本をたくさん読んで研究に時間を割けるので充実していると語ってくれました。研究熱心なキムさん、残りの任務時間も充実した研究になりますように。ありがとうございました!
取材日:2020年12月2日

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