池田湖の水環境保全

掲載日 2023年9月14日
分野 自然生態系
地域名 九州・沖縄(鹿児島県)

気候変動による影響

鹿児島県指宿市にある池田湖は、大昔の火山活動によって形成された周囲15km、最大水深233mの九州最大のカルデラ湖です(図1)。池田湖では、気候変動の影響として、気温上昇に伴う湖内水温の上昇や、湖水の全循環の停止による底層の溶存酸素の低下・無酸素状態が既に確認されています。このまま気候変動が進行することで、表層の溶存酸素の低下や底層での貧酸素化や湖水の鉛直循環に変化を及ぼすことが懸念されています。

取り組み

鹿児島県では、温暖化等の影響により底層域での無酸素状態が継続している池田湖について、底層水質の悪化がもたらす影響や湖水循環のメカニズムを研究し、湖水循環を誘起する有効な方法について検討するとともに池田湖の良好な水環境を保全するため、流入する汚濁負荷を削減するなどの各種の環境保全対策を実施し、将来にわたり良好な水環境を保全するための計画である「池田湖水質環境管理計画」(注)を推進しています。

計画の中では、水質汚濁の指標である化学的酸素要求量(COD)、全窒素(T-N)、全りん(T-P)の濃度について水質環境保全目標が定められており、達成するために以下のような具体的な対策が示されています。

分野 内容 詳細
発生源対策 畑かん注水に係る汚濁負荷量(全窒素)の削減対策 ・池田湖への注水量の削減(注水管理の徹底、特に降雨後の注水管理) ・池田湖へ注水される水の全窒素(T-N)濃度の低減(間接集水域における施肥管理の促進)
水産養殖業対策 ・適正規模による養殖、養殖方法の改善、給餌法の改善等
工場・事業場排水対策 ・規制対象施設:排水基準の遵守を徹底 ・未規制対象施設:「鹿児島県小規模事業場等排水対策指導指針」により水質保全に努める
生活排水対策 ・住民意識の啓発活動 ・窒素・りんの除去効率の高い高度処理型合併処理浄化槽の設置
農畜産業対策 ・適正な施肥の促進 ・適正な家畜ふん尿の処理促進(法令遵守、経営規模及び立地条件等に適した家畜 排せつ物処理施設の整備) ・節水意識の高揚
普及啓発 水質保全に係る取組及び成果 ・生活排水に関するパンフレットの作成・配布、イベントや研修会の開催等
気候変動の影響に伴う水質環境への影響に関する調査研究結果 ・県や国等が実施している調査研究結果等の情報発信
流域水循環計画に基づく取組状況 ・「流域水循環計画」の趣旨を踏まえた各種水質保全対策についての取組状況に関する情報発信
持続可能な開発目標( SDGs)の達成に向けた取組状況 ・SDGs 概念を踏まえた池田湖の水質源の持続可能な利用の取組状況に関する情報発信
土地・水面利用対策 適正な土地・水面利用 ・池田湖の集水域への汚濁物質の排出の抑制等
環境影響評価等の推進 ・環境影響評価の適正な実施 ・「鹿児島県環境基本条例」及び「鹿児島県環境基本計画」に基づく環境への適切な配慮

効果/期待される効果等

継続的な保全対策を実施してきたことにより、令和4年度においては、化学的酸素要求量(COD)、全窒素(T-N)、全りん(T-P)の全てにおいて、目標値を達成していました(図2)。

今後も、県や関係市をはじめ、事業者や地域住民一人ひとりが計画の趣旨を十分理解し、関係者一体となって積極的な努力を重ねることを目指しています。

池田湖
図1 池田湖
(出典:鹿児島県ウェブページ「池田湖水質環境管理計画」(令和3年3月))
池田湖の水質の状況
図2 池田湖の水質の状況
(出典:鹿児島県「池田湖の水質の状況」)

脚注
(注)池田湖水質環境管理計画は昭和58年に第1版が策定され、以降おおむね10年を区切りとして、対策の効果の評価や計画策定後の社会情勢の変化に合わせた水質環境保全対策の見直し等を行いながら改訂されており、令和3年3月には5版目にあたる計画が策定されました。

出典・関連情報

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