砂浜・海岸林の保全・再生

掲載日 2023年10月20日
分野 自然災害・沿岸域 / 自然生態系
地域名 全国

気候変動による影響

砂浜は波を減衰させ、高潮や津波等の災害から人命・財産を守る防護しての役割や、多くの生物の住処として白砂青松等の独特の自然環境・優れた景観を構成する環境としての役割、地域社会における人と海の触れ合いの場、祭りやレジャースポーツの場等、文化・歴史・風土の形成の役割を担っている。1)

気候変動による海面水位の上昇や台風の強度増加に伴う荒天時の波高増加は、砂浜の形状や面積に影響を及ぼす。

将来的には、気候変動による海面水位の上昇によって、海岸が侵食される可能性が高い。具体的には、2081~2100 年までに、RCP2.6 シナリオでは日本沿岸で平均 62%(173km2)の砂浜が、RCP8.5 シナリオでは平均 83%(232km2)の砂浜が消失するとの報告例がある。

(気候変動適応計画(2021、閣議決定)より抜粋・引用、一部CCCAにて参考文献を参照し追記)

取り組み

養浜や海岸林の整備によって砂浜を保全・再生し、高潮・波浪の影響の軽減や生息環境の創出、炭素固定等の機能を発揮させる。

養浜 海岸に砂を供給することで、人為的に砂浜を造成すること。 波浪の作用で養浜地点の下手側へ漂砂として運搬されることを意図して養浜を行う動的養浜と、突堤や離岸堤等で保全された場所に養浜を行う静的養浜がある 。2)
衛星画像を活用した海岸モニタリング 砂浜の管理を行っていく上で、できる限りコストを掛けずに砂浜の浸食の兆候を把握する必要がある。そこで、衛星画像を活用して汀線を抽出することで、浸食の兆候を把握する。1,3)
海岸林 昨今、マツ材線虫病の蔓延により、クロマツ林の枯損が多発しており、落ち葉掻き等の林床管理が行われなくなり、クロマツ林の広葉樹林化または混交林化といった林相転換が起こっている。これを利用することで松枯れから防災機能を守る手法が提案されている。4)また、海岸地域の生態系(エコシステム)の特質を踏まえた海岸林の整備・保全へと方針の転換を行う必要がある。5)

期待される効果等

気候変動により海面水位が上昇し、高潮や高波による被災リスクの上昇が予測される中、砂浜により後背地への波浪の影響を軽減できる 。6,7)

津波の波勢の減衰、津波到達時間の遅延、漂流物の捕捉などの津波被害の減災 8)、飛砂、風害の防止といった効果がある。5)

適応策以外の分野において期待される効果については下表のとおり。

生物多様性 多様な生息環境の創出
砂浜・海岸林は潮間帯・海岸の生態系を構成する要素であり9)、保全にあたっては、海浜植物が生育する海岸林や砂丘よりも海側に成立する後浜、前浜、外浜、沖浜の生態系とセットで保全することで多様な生息環境の創出に貢献しうる。10)
緩和策 炭素固定
海草の生育場となる(海草の藻場の海底には有機物が堆積する巨大な炭素貯留庫となっており、ブルーカーボンとして貢献する。11)
ただし、砂浜自体に炭素固定能があるわけではないので注意が必要である。
出典・関連情報

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